酔った勢いで不倫?意識がない時の不貞行為は法的にどうなるの?
- 2018-11-4
- 浮気調査などを依頼された依頼者様の声
- 事例, 浮気調査, 訴訟

離婚事由に該当する不貞な行為の基準は「性的な関係」の有無。
通常、このような行為に及ぶ時にはお互いに性的な関係を持つ意思がある事を前提に考えます。
しかし、中には積極的な意思が無いまま性的な関係を持ってしまった…というケースもあります。
その中で最も多い事例が「酔った勢い」というもの。
刑事事件では泥酔時に犯した犯罪は「責任能力に欠ける」として無罪、または減刑されるケースがあります。
では、同じように酔った状態での不貞な行為は「責任能力に欠ける状態だった」として、責任を求める事は無理なのでしょうか?
判例から見る結論は「責任を求める事は出来ます」
しかし、本当に泥酔していて意識がなかった場合や、一度だけの関係だった場合は離婚請求を認められないでしょう。
当然、慰謝料の請求額も少額しか認められず、相手女性への慰謝料請求も認められるかどうかはケースバイケースになります。
では、以前に相談を受けた事例を基に解説していきます。
依頼者の夫は元々お酒に強い方では無く、酔うと意識が無くなる事もありました。
そのため、忘年会シーズンなどはシティホテルを利用することもあったそうです。
(それ以前は駅で寝込んでしまう事もあり、そのたびに高額のタクシー代を出すわけにもいかず、奥様が夜中に車で迎えに行った事もあったそうです。)
浮気をするようなタイプでは無い…と思っていたのであまり気にかけないでいましたが、先日届いたクレジットカードの詳細を見ると、明らかに2名分の宿泊費の請求の記載が…。
不自然な請求内容だったので夫に聞いてみると「同僚も終電を逃したので一緒に泊まって会計をした」と言っていますが、どの同僚かについては明言をしませんでした。
不審に思い問い詰めた結果、
- 相手は同じ職場の20代の独身女性。
- 朝起きたら同じ部屋にいたが、彼女がベッドに寝ており、自分はソファーで寝ていた。
- 何もなかったと思うが泥酔していたため記憶がない。
との説明でしたが、夫の話だけでは納得できません。
相手女性にも説明を求めましたが、その回答は「不貞行為をした事実は無い」の一点張り。
当初は離婚や慰謝料請求までは考えていなかったものの、相手の不誠実な対応に不審な点があったため、裏付けを取りたい…という依頼でした。
不貞行為に関する判例では「男女が同室で宿泊をした場合、不貞行為があったと考えるのが自然」とされています。
この場合、夫と相手女性の記憶の有無に関わらず「少なくとも1度の不貞行為があった」とみなされるのが通例。
この点に関しては弁明の余地はないでしょう。
次に大事になるポイントが「二人の関係性」です。
「酔った勢いだけ」が理由であれば、プライベートでの接点は無いはずです。
この時の調査では下記の3点に重点を置いて双方の素行調査を行いました。
- ■業務上の付き合いを超えた関係が本当に無かったか?
- ■仮にあったとしたら、その関係は継続的なものだったかどうか?
- ■この一件以来、親密度を増していないかどうか?
調査を行なった所「不倫関係は認められないものの、終業後に二人で食事に行った過去もあり、ある程度の親密な関係性は認められる」という結果でした。
つまり、黒とは言い切れないものの、白とも言い切れない微妙な関係。
依頼者としては、限りなく黒に近いグレー…という認識だったようです。
この結果を踏まえて、依頼者は「誓約書の提出に応じなければ離婚訴訟も検討する」として双方に通知。
裁判をしても慰謝料請求が認められる見込みはありませんでしたが、責任の所在を明確にしておきたい意図がありました。
夫はすぐに応じましたが、相手女性は「私は何もしていないのに納得できない!」と裁判も辞さない姿勢でした。
しかし、依頼者側には詳細な調査資料があったために、裁判になっても勝てる見込みがない…と悟り、最終的には誓約書を提出。
その後、相手女性は誓約書に従って退職(接触禁止事項)をし、その後は何事もなかったかのように別の会社へ転職をしました。
今思えば、本当に二人は何も無かったのでは?と思う節もありますが、そこは「大人の責任」が問題視された所。
泥酔を理由に不倫を無罪放免にしていたらキリがありません。
正直、3人とも納得している…とは言えませんでしたが、この時は夫と相手女性の関係性を裏付ける証拠資料を手に入れていた依頼者が有利だった…と言えるでしょう。
泥酔していて意識がなかったとは言え、夫の安易な行動がトラブルの原因だった…という事だけは明白な事実です。